見せばやな 雄島のあまの 袖だにも
ぬれにぞぬれし 色はかはらず
殷富門院大輔
<現代語訳>
あなたにお見せしたいものです。
悲嘆の涙で色の変わってしまった私の袖を。
雄島の漁夫の袖でさえ、波に濡れてしまっていても
決して色が変わることはないのに。
<解説>
第九十番。
出ましたね、涙に濡れる袖。
・・・と、思ったら、『袖モノ (苦笑) 』は意外に多いことが判明しました。
四十二番、六十五番、七十二番、九十番、九十二番なんかがそうですね。
うむむ、恐るべし、袖(笑)
さて、この歌は「本歌取り」と言いまして、ある歌を素として、
一段と内容を深めた表現形式が使われています。
本歌は「松島や雄島の磯にあさりせしあまの袖こそかくはぬれしか (源 重之)」
雄島で漁をしている漁師の袖のように、私の袖も涙で濡れてしまいましたよー、という歌です。
ただ濡らすだけでなく、袖の色までも変えてしまう涙。
辛い恋の涙には斯くも凄まじい何かが込められている、ということなのでしょうか。
女性に流させたくはないものですね。
(男の涙も見たくはないが)
「ゴン」
私の住んでいるアパートはロフトのある部屋が特徴です。
かれこれ、住み続けて六年くらいになるでしょうか。
おそらく、私が一番長い住人ではないかと思います。
そんなわけで、数多く、行く人来る人を見てきたわけですが、
隣室の住人の引っ越しも二回ほど経験しています。
そのお話。
私は、新しい住人が隣りに入ってくると、
取り敢えず、深夜、耳を澄まします。
半木造アパートの壁はそう薄くはありません。
ですので、声や普通の音はそうでもないのですが、
壁を叩いたりする音は比較的よく聞こえます。
そうすると、冒頭で書いたような、鈍い(でもかなり響く)音が、
ちょうど隣の部屋のロフト辺りから聞こえてくることがあります。
悪いけど、腹を抱えて笑ってしまいます。
そう、ロフトって、慣れないと頭をぶつけます。
それも、一回目は、かなり強烈に。
無意識に立ち上がろうとするから、なんでしょうね。
かくいう私も経験者ですが、その痛みと言ったら・・・。
ロフトって素敵です。
このほかにも、色々と楽しいことがありますが、
その話はまた別の機会に・・・。
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