うらみわび  ほさぬ袖だに  あるものを 

  恋にくちなむ  名こそをしけれ

                     相模  


<現代語訳>

 あなたの冷たさを恨み嘆いて、
 私の袖は涙の渇くひまさえありません。

 その袖すら、朽ちないでこうしてあるというのに、
 恋のために立つ浮き名のせいで
 私の名が朽ちてしまいそうなことが
 まことにくやしくて・・・。

<解説>

 第六十五番。
 女性の、つらい片思いの歌。

 渇かない袖は朽ちずとも、名前が先に朽ちてしまうと
 そう悲しんでいます。

 いいじゃないですか、名前くらい、朽ちたって。
 その恋が叶うのならば。

 そう思うのは、現代人ゆえ、なのでしょうか。




 願いは、心の底から望まねば、叶わない。

 祈りは、ありったけの思いを込めなければ、聞き届けられない。

 昔、誰かが言っていました。

 誰だったんだろう・・・。    





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