朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木
権中納言定頼
<現代語訳>
夜明け方、宇治川の一面に立ちこめていた川霧が
とぎれとぎれに晴れてきて、
そこここの瀬の網代木が次第に姿を現し始めます。
<解説>
第六十四番。
前の歌に続き、テーマは、また「立ちこめる霧」です。
何というか、水墨画、の世界です。
ちなみに、網代木は冬の景物。
浅瀬で魚を取る際に竹・木を編み重ねて張る漁具の
支柱の杭のことです。
さらに余談ですが、詠み人の定頼氏、古式部内侍を
歌合の席でからかい、「
大江山〜」の歌で答えられ
返答に困った、という逸話が残っています。
困ったおじさんですね。
冬の明け方。
清冽で、身の切られるような寒さ。
手指を擦り合わせたときのサラサラとした感触が好きでした。
ぴーんと張りつめた空気に
否応なく、緊張感が生じます。
冬、嫌いじゃないです。
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