すみの江の  岸に寄る波  よるさへや 

  夢の通ひ路  人めよくらむ

                     藤原敏行朝臣  


<現代語訳>

 住吉の海岸に打ち寄せる波のように、
 夜、あの人に逢いに行く夢を見ようとします。

 でも、人目のない夜だというのにどうして
 夢の中の恋の通い道で人目を避けているのでしょう。
 夢ですら、あなたに逢うことができません。

<解説>

 第十八番。
 住の江は、現在の大阪市住吉区住吉の浦のこと。

 人目を避けて逢わなければならない二人。
 それならば、せめて夢の中でも。

 抑えきれない恋慕の情が伝わってくるようです。

 ねぇ、せめて、夢で逢いたいと願う夜に限って一度も
 出てきてはくれないね...

 song by Dreams Come True.




 会いたくても会えない。
 そんな状況に、身を置いたことがあります。

 会いたくて、会いたくて、どうしようもなく会いたくて。

 それを望んでも、会える状況ではなかった。

 ただ、お互い、生きてさえいれば、きっと会える。
 状況が少しでもマシになりさえすれば、絶対に会える。

 そう思って、耐えたものです。





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