わが袖は  潮干にみえぬ  沖の石の  

   人こそしらね  かわくまもなし

                     二条院讃岐  


<現代語訳>

 私の袖は
 潮が引いてしまったときにも
 見えることのない沖の石のように
 貴方を恋い慕う涙で、
 乾くこともありません。
 人は誰も知りませんが。



<解説>

 第九十二番。

 また出てきました、濡れた袖。

 誰にも知られることなく、
 深い海底に沈んでいる石。
 ただ沈黙を続ける石に、我が身を見立てて、
 口に出すことの出来ない片思いの辛さを歌っています。

 沖の石を自分自身に例える独創性が高く評価され、
 その秀逸さゆえ、二条院讃岐は後世、
「沖の石の讃岐」
 と、言われ讃えられたそうです。
 ・・・あんまり嬉しくないかも(苦笑)





 独 占 欲

 大切なものを失いたくなければ、
 鍵を掛けて、しまっておくといい。
 決して人には見せず、大事に縛る。
 自分だけのものにしてしまえばいい。
 鎖で繋ぎ、常に見張っていればいい。
 何処かに飛んでいってしまわぬように。






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