憂かりける  人を初瀬の  山おろしよ  

   はげしかれとは  祈らぬものを

                     源俊頼朝臣   


<現代語訳>

 冷淡な人。
 それでも募る恋心に、
 少しだけでもあなたの心が私の方を向いてくれたら、と
 初瀬の観音にお祈りをしました。

 でも、初瀬の山おろしよ。
 お前のように、ますます冷たく、激しくなれとは、
 決して祈らなかったのに・・・。

<解説>

 第七十四番。

 祈っても逢えぬ恋。
 思いが募れば募るほどに、
 相手の心は冷めてゆく。

 世は不条理。
 世は無常。

「何故?」という、彼の嘆きが心に響きます。

 負けるな、俊頼!





 思って、嘆いて、慕って、祈って。

 喜んで、悲しんで、笑って、泣いて。

 嫌いになろうと思っても、決して嫌えず、

 相手のほんのひとことに一喜一憂してみたり。

 恋とは因果なもの。

 若者よ、悩みなさい、嘆きなさい。

 きっと、悩み、嘆いた分だけ、明日はいい日になるだろうから。





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