風そよぐ  ならの小川の  夕ぐれは  

   みそぎぞ夏の  しるしなりける

                     従二位 家隆  


<現代語訳>

 楢の葉に風がそよそよ吹いてきます。
 このならの小川の夕暮れは
 まるで秋の訪れを告げているようです。

 ただ、この川の畔で行われているみそぎだけが
 今がまだ夏であることの証拠でしょうか。

<解説>

 第九十八番。
 れっきとした夏の歌。

 初夏とはまだ言えない、ややもすると肌寒い季節の変わり目。
 秋の気温のようだ、といったところでしょうか。

 ならの小川は京都市北鴨川神社の境内を流れる御手洗川の別称。
 みそぎは夏の終わりに行われる六月祓(夏越しの祓え)のことです。





 二十四の季節のある国、日本。

 春は、立春・雨水(睦月)啓蟄・春分(如月)清明・穀雨(弥生)

 夏は、立夏・小満(卯月)芒種・夏至(皐月)小暑・大暑(水無月)

 秋は、立秋・処暑(文月)白露・秋分(葉月)甘露・霜降(長月)

 冬は、立冬・小雪(神無月)大雪・冬至(霜月)小寒・大寒(師走)

 季節感がなくなった、とはよく聞きますが
 なんの、まだまだ(笑)






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