しのぶれど  色にいでにけり  わが恋は 

  物や思ふと  人のとふまで

                     平 兼盛  


<現代語訳>

 ひたすらに、包み隠してきた恋心。

 とうとう、顔色、表情に現れるようになってしまいました。

「恋患い?」と人が怪しんで尋ねるほどに。

<解説>

 第四十番。
 忍んでも忍びきれない慕情は
 いつしか、意識せず、表情、仕草に現れてしまいます。
 その様子を詠んだ歌。

 問われた本人の戸惑いが見えるかのようです。

「恋の物思い?」と、怪しまれるほどに、
 なすことも手に付かず、溜息ばかりをつく日々。

 少なからず、経験があるはず。
 あなたは何を、思いましたか?




 物思いは、意識的にする場合とそうでない場合があります。

 前者は理で、後者は情で考える。
 私はそう感じています。

 時折、私もぼーっと、物思いにふけったりもします。

 そんな折り、後輩の一言、

「先輩、借金の勘定ですか?」

 どうやら、指を折っていたのがいけなかったようですね。
 彼はその後、たっぷり可愛がられたそうです。

 私の物思いはそんな下賎なことだけでは、ありませんよ(笑)    





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