わびぬれば いまはたおなじ 難波なる
みをつくしても あはむとぞ思ふ
元良親王
<現代語訳>
あなたに会えず、私は苦悩の底に沈んでいます。
この今となってはもう、どうせ同じことなのですから、
この身を捨ててでも、あなたに逢いたい。
難波にある、「みをつくし」の言葉のように、
この身を尽くしてでも。
<解説>
第二十番。
天皇の愛した女性と元良親王の恋愛関係が発覚してしまい
彼女と逢えない状況に陥っている、というのが
この歌の背景のようです。
男の一途な思いは「みをつくし」の一言に集約されている、
そう言い切ってしまっても、決して過言ではないでしょう。
みをつくし。
これ以上の説明は不用です。
誰かを好きになるということは
負けるということだ。
相手の言葉に一喜一憂したり、
相手のことを考えて、夜も眠れなくなったり。
だから、相手よりも多く好きという感情をもっちゃいけない。
それは「自分の負け」を意味するのだから。
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