思ひわび  さてもいのちは  あるものを 

  憂きにたへぬは  涙なりけり

                     道因法師  


<現代語訳>

 あなたの冷淡さに、このところ、思い悩んでいます。

 それでもこの命だけは今まで繋いでいるけれど、
 つらさに耐えきれないで涙だけがこぼれ落ちることです。

<解説>

 第八十二番。
 命はつらさに耐えて何とか繋いでいるけれど
 涙はつらさに耐えきれず、脆くもこぼれ落ちる。

 そうした風情を詠んでいます。
 恋の成就のために、命を長引かせようと思う気持ち、よくわかります。

 ただ、法師、と言うわりに艶のありすぎる歌です。
 その上、女々しいし。

 九十歳になっても歌合に出席した、という逸話も残る道因法師、
 彼もまた、仏道修行に向かぬお人、と判断しました。




 涙。

 縁がなさそうで、実は非常に涙もろい猫目です。

 時代劇の「いつもすまないねぇ」
「お父っつぁん、それは言わない約束でしょ」
 などといった場面でも、平気で泣けます。

 人には見せられない姿です。

 最近は泣いてませんね、そういえば・・・。





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