小倉山  峰のもみぢば  心あらば 

  いまひとたびの  みゆき待たなむ

                     貞信公  


<現代語訳>

 小倉山の峰の紅葉よ。
 もしもおまえに情緒を理解する心があるのならば
 もう一度あるはずの行幸まで
 散らないで待っていて下さい。

<解説>

 第二十六番。
 行幸(御幸:みゆき)=天皇のおでまし。

 天皇に捧げた歌です。

 宇多天皇が小倉山の紅葉の美しさに感動し、
 息子、醍醐天皇も来てみるべきだ、との言葉を受けて
 作られた歌のようです。

 貞信公=藤原忠平。
 藤原氏の中心として、天皇の信任が厚かった、というのも
 伊達ではないようですね。




 通学路の紅葉が、いつのまにか真っ赤に色づいているのに気づきました。

 季節は人を待ってはくれません。
 移りゆく季節の中、その時々の趣は
 人の心を豊かにしてくれます。

 変わる季節の中で移り変わってゆく心を
 変えないでいられることも
 人だけが持つ能力のひとつであるのかもしれません。

 願わくば、そのまま変わらないでいてほしいものです。





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