ちぎりおきし  させもが露を  いのちにて 

  あはれ今年の  秋もいぬめり

                     藤原基俊  


<現代語訳>

「私がいる限りは、頼りにせよ」と
 あなたの約束して下さった、
 あのさせも草におかれた露のような
 ありがたいお言葉。

 そのお言葉だけを頼りにしてきましたが、
 今年の秋も、望みの叶わぬままに
 むなしく過ぎていってしまうようです。

<解説>

 第七十五番。
 この歌も、百人一首中、異色の歌です。

 子の出世を願う親心が歌われています。

「私を頼りにしていいよ」=「子どもの出世は任せておけ」という
 上司(氏の長者藤原忠通)の言葉を信じたものの、
 息子、僧都光覚はまたも維摩会(維摩経を教える法会)の
 講師の選に漏れてしまいます。

 その藤原忠通を恨んで詠まれた歌、だそうです。

 いつの時代も、子の出世を願う親心は変わらぬもの、なんですね。




 子どもに期待しない親はいません。
 きっといないはずです。

 しかし、子どもからするとそれが余計な重荷となったり
 精神的に追いつめられたりすることもあります。

 自分が親になったとき、その経験を生かせるか? と言われると
 そういうわけにもいかないようですね。

 久しぶりに、実家に電話でもしてみることにします(笑)





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