おほけなく うき世の民に おほふかな
わが立つ杣に 墨染の袖
前大僧正慈円
<現代語訳>
身の程をわきまえぬことだが、
つらいこの世に生きる人々を救いたい。
彼らの上に、法会の袖を覆い、御仏の加護を祈りたい。
私が住みはじめる比叡山における仏道修行によって。
<解説>
第九十五番。
ある意味では、百人一首中、最も平和な歌。
でなければ、最も異色の歌。
「これから仏道修行に励むぞ」、という決意の歌です。
この前大僧正慈円という方、十一歳で比叡山に入山し、
十四歳で出家、それから厳しい修行を積み、
天台座主(最高位の僧職)を四度に渡って勤めたエリートです。
さもありなん。
「坊主と医者には好色が多い」という言葉があります。
要するに、知的職業であればあるほど
『ムッツリ助平』である、ということなのです。
さて、真相は?
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