あはれとも いふべき人は 思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
謙徳公
<現代語訳>
冷淡になってしまったあなた。
私の死を「可哀想に」と言ってくれる人も思い浮かばないままに、
きっと、私はこのまま虚しく死んでしまうことでしょう。
あなたへの恋に焦がれながら。
<解説>
第四十五番。
つれない女性に対する恋の嘆きです。
率直すぎてちょっとイライラします。
恋の相手が冷たくなり、会ってくれなくなったから、だそうです。
「私を捨てないで。」
そう言っているのがありありとわかって
気持ちが分かるだけに、腹が立ちます。
男だったら、という言い方はあまり好きではありませんが、
男だったら、もう少ししゃきっとせい、と言いたくなります。
猫目は男です。
誰の記憶にも残らず死んでしまうとしたら、
それは悲しいことだろう。
誰に悲しんでもらうこともなく死んでしまうとしたら
きっと悲しいことだろう。
人は、己の生きた証を何かに残しておきたいもの。
だからこそ、私はまだ、死ねない。
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