君がため  春の野にいでて  若菜つむ 

  わが衣手に  雪は降りつつ

                     光孝天皇  


<現代語訳>

 あなたのために、春の野に出て
 若菜を積んでいる私の袖に
 雪が降りかかってきます、次々と。

<解説>

 第十五番。
 少し有名な歌ですね。

 恋人に送る歌にしては親近感がありすぎて
 多少、艶っぽさに欠けます。
 親しい人に送った歌、と考えるのが自然なようです。
 私の推理では、妹、あるいは娘?

「あなたのために、行って来たんだよ」という素朴な心情が
 全面に押し出されおり、情景が微笑ましく浮かび上がります。

 ちなみに「若菜」は
「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ」の
 春の七草を指します。

 食べ物を贈ったんですね。
 色気がないわけだ(苦笑)




 君がため、にしてあげられることは多いようで少ないです。
 ましてや何の見返りも求めない、というのは、私の中では、奇跡に近い行いです。

 でも、見返りが「尊敬」とかいう場合も多い気がします。
 特に後輩からの頼まれごとに対して。
 多少、無理をしてでも「頼れる先輩像」を作り上げようとしちゃいます。

 あとは、もっと親しい人からの依頼。
 最悪です。
 状況が許す限り、自分のことを投げ出してでも、やっちゃいます。
 見返りは「ありがとう」(笑)

 何だか矛盾してるなぁ・・・。

 私が親しい人の頼まれごとを断れない、というのは、
 気が弱いから、なのかもしれませんね。





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