ながらへば  またこのごろや  しのばれむ 

  憂しと見し世ぞ  今は恋しき

                     藤原清輔朝臣  


<現代語訳>

 もしこれから生き長らえたならば
 つらいことの多い現在が、懐かしく思い出されるのでしょうか。
 かつてはつらいと思っていた過去が、今では恋しくさえ思われるのですから。

<解説>

 第八十四番。
 今がどんなにつらくても逃げちゃいけない。
 つらいことは、きっと、忘れてしまえる日が来るから。

「時は万能の魔術師」という単語が浮かびます。
 たぶん、そうなのでしょう。

 でも、時間の経過だけを頼りに生きていくのも
 何だか少し消極的な気がして
 この歌を素直に好きになれないのも事実です。

 後悔しない生き方をしたいですね。




 つらい過去、振り返ると何だか懐かしくて
 知らずに、顔がほころんでしまう。
 そんなことって、ありますよね。

 あの頃はあんなことがあったんだっけなぁ、などと考えるにつけ、
 自分がすっかり大人になってしまったんだな、と
 少し寂しくもなります。

 ピーターパン・シンドローム(苦笑)





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