いにしえの 奈良の都の 八重桜
けふ九重に にほひぬるかな
伊勢大輔
<現代語訳>
かつて、奈良の都で咲いていた八重桜が
今日、この平安の都、この宮中において
一段と美しく咲き誇っております。
<解説>
第六十一番。
背景としては、新参者の伊勢大輔が
古都、奈良より送られた桜を取り入れる役目を紫式部から譲られ、
さらに、藤原道長からは「歌を詠め」と言われ、
中宮彰子の前にて、緊張して読んだ即吟の歌がこれ、だそうです。
この歌、万葉集、小野老朝臣作の
青丹よし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今さかりなり
を踏まえた上で詠まれているあたり、
大輔君の博識が見て取れましょう。
まさに晴れの舞台に相応しい絢爛な歌です。
「雪が解ければ何になる?」という質問を思い出しました。
答えは「水」もしくは「春」だそうです。
前者は理系的考え方で
後者は文系的だ、というようなことをききましたが
昔々、北国では堆く積もった道路端の雪の塊が溶けると
真っ黒な粉塵の山に変わったのを覚えています。
まだスパイクタイヤ全盛の頃のことです。
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