なげきつつ ひとりぬる夜の あくるまは
いかに久しき ものとかはしる
右大将道綱母
<現代語訳>
愛しい方。
今宵も私は貴方の来ない寂しさを嘆きながら
独り寝の夜を過ごさなくてはなりません。
その私にとって、夜明けまでの時間がどんなに長いものか
貴方にはおわかりでしょうか?
いいえ、きっとわかっておられないことでしょうね・・・。
<解説>
第五十三番。
もし、こんな文をもらったら
男としては何をおいても駆けつけたくなるのが人情です。
それを計算してこの歌を詠んだとしたら
この女性、相当したたか、としか言いようがありません。
個人的には好きですけどね、そういう女性(笑)
ちなみに、作者の右大将道綱母は『蜻蛉日記』の筆者。
本朝三美人のひとりと称された才女でもあります。
別れて三ヶ月間。
家に独りでいることに耐えられなかった。
休日は用がなくても常にどこかに出かけていた。
「ぽつん」と何もしないで座っている自分がイヤだった。
他の人は、何をして過ごしているのか、疑問に思った。
今でもときどき、独りきりの空間に耐えられなくなる。
女々しいね、やっぱり。
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