このたびは  ぬさもとりあへず  手向山 

  もみぢのにしき  神のまにまに

                     菅家  


<現代語訳>

 今回の旅は大層慌ただしく出発してしまった。
 そのために、神にたむける幣(ぬさ)も用意してくる暇がなかった。
 そこで、手向山のこの美しい紅葉の錦を幣として献上しよう。
 神の御心のままに。

<解説>

 第二十四番。
 菅家=菅原道真。
 讒言のために太宰府に左遷されたのはあまりにも有名。
 こち吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ の詠み人。
 諦めの境地、とも取れなくもない句です。
 望んで九州に赴任するわけではないのに。

 この辺り、今の会社員の心境に通じるものがありますね
 
 ちなみに、この菅家という方、読み札の肖像では、本当に『紅葉の錦』を着ておられるところが、何だかお茶目でちょっと笑えます。





 旅に出る前に常に疑問に思うことがあります。
 駅へと向かう夜明け前の道を歩きながらふと考えること。

「・・・はて? 玄関の鍵を閉めてきただろうか?」

 特に、1週間以上留守にする場合に限って、こんな疑問が頭をよぎります。

 確実に閉めた、とは言い切れない。
 さりとて、閉めてなかった、とも考えにくい・・・どうしたものか。

 結局、重い荷物を持って引き返してみたりするとしっかり鍵は掛かっていたりして・・・。
 旅に思う、というほどのものでもありませんけどね(笑)  





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