ありあけの つれなく見えし 別れより
あかつきばかり うきものはなし
壬生 忠岑
<現代語訳>
有明の月は、夜が明けてからも冴え冴えとして見えるもの。
あのとき、つれなく見えたのは、有明の月?
それともあなたの態度?
たぶん、両方なのでしょう。
でも、その別れ以来、私にとって夜明けほどつらいものはないのです。
<解説>
第三十番。
別れを告げられた日、見えていた有明の月。
その冷たさと相手の冷淡さがダブって見えた。
夜明けまで、相手と共に過ごしたのか、それとも、来ない相手を待ったのか。
きっと後者なのでしょうね、確証はありませんが。
その日以来、夜明け近くになると、別れたときの記憶が思い出されてつらくなります。
空に出ていた冷たい有明の月の記憶とともに、さらにつれない相手の態度を思い出して。
でも、まだ、その人を忘れることはできないようです。
別れてしまった今でも。
このつらい記憶をいつまで持ち続ければあの人を忘れられるのだろう。
どれだけの時間が過ぎれば、 以前のように笑えるようになるのだろうか。
恋愛に別れはつきものです。
でも、別れたからとて、すぐに次の相手を、と、
考えられるほど器用ではありません。
それならば、恋愛などしない方がいいのかもしれませんね。
もしそんなことが可能ならば。
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