心にも  あらでうき世に  ながらへば 

  恋しかるべき  夜半の月かな

                     三条院  


<現代語訳>

 心ならずもこのつらい世に生き長らえたなら、今夜の美しい夜半の月が
 きっと恋しく思い出されることだろう。

<解説>

 第六十八番。
 こんな世の中に生きていたくはない。
 さりとて死ぬ勇気もない。
 生き長らえたとて、さして良いこともない。
 目の前の月以上に美しいものに、巡り会えるはずもない。

 希望のない歌、という印象を受けます。
 月の美しさを褒めているようでいて、己の不遇を嘆いている、そんな風に取れます。





 退屈な日常。
 つまらない毎日。
 逃げ出して、すべてを投げ出したくなる。

 何処にも逃げ場なんてないのにね。

 身の境遇を嘆いても何も変わるものではない。
 変えようと思っても、なかなか状況は変わらない。
 それならいっそ、諦めてしまう?





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