Experiment
猫目は薬学生なわけで
それも大学院生(M2)なわけですから
研究とかもしています。
研究テーマは『シクロスポリンのリポソーム化に関する研究』( The Study of LIPOSOMAL CYCLOSPORIN A )
詳しく説明すると非常に面倒な上に全く面白くもなんともないので、手短に説明しますと・・・
まず、シクロスポリン( Cyclosporin A ; CyA )という薬剤が存在します。
これはいわゆる『免疫抑制剤』というもので、現在、臨床では腎、肝、骨髄移植後の急性・慢性拒絶反応 ( graft-versus-host disease ; GVHD ) の治療目的で使用されています。
Fig.1 structure of Cyclosporin A
この薬物は抗原刺激によるT細胞受容体を介したT細胞初期活性化を特異的にブロックします。
作用機序は、Tリンパ球活性化の初期に必要な IL-2 の転写の阻害です。T細胞は二段階のプロセスを経て活性化されます。まず、休止期T細胞に対する抗原刺激によるサイトカイン( IL-2 など )の産生と受容体発現、および、それに引き続くサイトカイン刺激による増殖、分化過程です。
この経路を詳しく述べると、抗原(この場合、移植された他者の臓器片)がマクロファージ( MAC )等の抗原提示細胞( antigen-presenting cell ; APC )によりTリンパ球に「提示」され、それをT細胞が「非自己」と認識ことによりT細胞内のカルシウム濃度は一過性の上昇を見せます。それにより、T細胞中に存在するカルシニューリンが活性化を受け、カルシウム依存性ホスファターゼ(リン酸化タンパク脱リン酸化酵素)の活性が上昇し、細胞質に存在しているNF−AT( nuclear facter of activated T cell )の脱リン酸化が起こり、NF−ATは核内へと移行します。核の内部でNF−ATは他の転写因子と複合体を形成し、IL-2 遺伝子のプロモーターに結合することにより IL-2 が産生されるわけです。
CyA は、T細胞内でイムノフィリンと結合することによりシクロフィリンという結合体を形成します。このシクロフィリンがカルシニューリンと結合するとその活性が阻害され、上記のステップは停止し、T細胞の増殖は起こらないわけです。
CyA はほとんどの移植手術後に使用されるほどの効果的な薬物なのですが、カルシニューリンを介した作用による腎障害(機序の上からは必然的ですが)が最も問題となる副作用として上げられています。また、その生物学的利用率( biovailability )には個体差が大きく、脂溶性が高いことから、血中ではその大部分が赤血球や血漿中のリポタンパクと結合して存在しており、投与量の決定は医師、薬剤師の経験によるところが大きいと言われる、困った薬物なのです。
この研究では、CyA のリポソーム( liposome )化を試み、最終的には in vivo におけるその有用性の検証をめざしています。
で、最近の知見では、研究テーマのタイトルとはちょっと違う内容になりそうです。と、言うのも、「私の作っているものがリポソームである」とはちょっと言いがたいからです。詳しくはもう少し実験を進めてから、ということで・・・(脱兎)。
What is LIPOSOME ?
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