カゴメ株式会社のとある一室。 昨夜から続く企画会議はいまだ終わる気配がない。 議題は『新商品の名称・パッケージング』 某C社の台頭をを妨げるべく 清涼飲料のカゴメが自信を持って世に送り出す新商品だが 炭酸入り清涼飲料、というだけで そのパッケージどころか、名前すら決まっていない。 何とか他社製品との明確な違いを打ち出したい。 そこが一番の頭を悩ませている原因でもあった。 首脳陣の疲労はピークに達していた。 このまま続けたら誰かが倒れる、そう思い始めた矢先、 一人が口を開いた。 「いっそ、オーソドックスに 『サイダー』というのはどうだろうか?」 さらに彼は続ける。 「そして、サイダーだけに、ラベルにも 『 犀』の絵を使う、というのは?」 くどいようだが、首脳陣は疲れていた。 それゆえ、正確な認識力、判断力を失っていた。 「ををっ、それは良いアイディアだ!」 社長の一声が響く。 それから、今まで膠着していた会議が、嘘のように進行していった。 清涼飲料なのだから、色は爽やかにした方が良い。 使う犀の絵はリアルであればある程良い。 部長、これはいけますよ。 打倒○○コーラ! …などなど、様々な意見が浮かんでは消えていき、 一つの商品が着々とその形を現していった。 皆の活気が乗り移ったかのように、 その商品は異例の早さで市場に出現した・・・。 その会議に出席していたW氏は、 その当時を振り返ってこう述懐している。 「結局、言い出した本人は今でも不明ですが、 どうして誰も「こんな商品は売れない」 と言い出さなかったのか、 それが今でも不思議でなりません。」 |
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