きりぎりす


 金色に 輝けるかな 秋の風

 半袖を 仕舞えぬうちに 神無月

 足下に 猫丸くなる 読書かな

 窓の下 鳴いているのは きりぎりす

 秋の夜は 深く優しく 暖かく

 嬉しいな 僕はまだ秋を 憶えてた


「解説」

 いつからか、風が涼しくなって、季節はもう秋。
 私の一番好きな季節です。

 朝の冷えた空気。
 暖かな布団の中で過ごす時間。
 夏の間、すっかり忘れてしまっていた至福の数分間。

 響く鈴虫の声。
 触れれば、指が切れてしまいそうな、刃の月。

 動かない空気。
 手には綾辻行人のミステリー。
 時計の針だけがゆっくりと進み、
 いつしか、夜の姿は次第に薄れてゆく。

 うん、いいね、こういう瞬間たち。

 秋は、私の一番好きな季節です。



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